Step 1 現状の把握
貴方は自社のシステムの現状をキチンと説明できますか?
ここでいうシステムとは経営システムであり、コンピュータ化してある業務と手作業で行っている全ての業務活動を指してます。
コンピュータシステムを考えるときに、上記で言うのシステムを把握していなければ、コンピュータシステムが経営そのものにどの様なインパクトを与えるかなどわかりません。
羅針盤を持たず、航海に出るようなものです。
また、現状をしっかりと把握しておけば、ベンダーは貴方の会社の実情を拙いヒヤリングで中途半端に把握したつもりにならず、後でよく問題になる『聞いてない』『言った言わない』 などの初歩的なミスが防げるはずです。
更にベンダーが行う『現状分析』工程を短縮し、掛かる費用を削減する効果を見込むことも可能になるはずです。ベンダー側としても、貴方の会社の業務内容や想いを漏れなく把握でき、効率的に作業を進められるはずです。
これは、ゼロからシステムを導入する場合も、既にあるシステムをリニューアルする場合も同じことが言えます。
それでは、下記の手順に従って現状を把握してみましょう。
Step 1-1 プロジェクトの編成
貴方の会社にシステム部門があれば、当たり前のごとくシステム部門を中心としたプロジェクトは編成されるでしょう。(そうでない会社もあるようですが)
しかし、システム部門を持たない会社の方が圧倒的に多い事は言わずと知れたことです。
システム部門を持たない会社でも、システムの事は分からないからといってベンダーに丸投げするのではなく、システム化検討・推進プロジェクトを編成しましょう。
その際、システム化の範囲によって関与すべきメンバーは変わってきますが、概ね以下の役割を持った方でプロジェクトを編成しましょう。
プロジェクト・オーナー
意思決定権限を有する責任者です。社長が最適。無理ならば、役員以上の方が適任です。
何故なら、本来システム化には基本的に業務改善が伴うからです。意思決定できる方のいないプロジェクトは、本来のシステム化の目的を達成できない傾向にあります。
プロジェクト・マネージャ又はリーダ
プロジェクト・メンバーを統率すると共に、計画立案・予算管理・進捗管理・外部委託先(ソフトハウス等のベンダー)との窓口等々、マネージメント業務が役割となります。
プロジェクト・メンバー
業務の実態を適切に把握している現場の方です。
現場の事は現場の方が一番熟知しています。経営者が捉える問題や課題とは異なる、現場だからこその問題や課題があるはずです。現場を無視したシステム化は、使われないシステムを作るようなものです。
- 権限を持ったプロジェクトを編成しましょう。
- プロジェクト構成員は、必ずシステム化を成功させるという強い信念を持つことです。
但し、プロジェクトが独裁的になってはいけません。
常に状況を全社にフィードバックし、皆の協力を仰ぐようにしましょう。 - 目に見えづらいデジタルの世界のプロジェクトであるからこそ、アナログな人間関係が成否を分かつ鍵となるのです。
Step 1-2 経営環境を明確に
システム化の検討に入る前に、会社の経営環境を取り纏めておきましょう。
経営の想い(戦略)がシステム全体に反映されていなければ、その環境の中で本当に必要な道具(戦術)を揃えることは難しいと思います。
具体的には、内部環境だけではなく、外部環境をも意識したビジネスモデルをイメージ化することです。
ビジネスモデルはどの会社でも描いているでしょうが、それを図にして目に見えるようにする事が大切なのです。
そうすることで、プロジェクト構成員が、そして全社員が誤った解釈をする事無く共有できるようになります。
また、経営環境が明確になっていなければ、効率的なシステム化の道筋を立てることは大変難しいことでしょう。
- 売上を向上させるためのシステム
- 社内業務を効率化するシステム
- 社外(取引先など)との取引業務を効率化するシステム
など、システム化にはいろいろな方向性があります。
でも、これらは自社の内部環境と自社を取り巻く環境を把握しているからこそ導き出せるのではないでしょうか。
現在の経営環境が明確になったら、
- 内部環境における『強み』と『弱み』
- 外部環境における『機会』と『脅威』
をプロジェクト内で十分話し合ってみてください。
気付いていたけど先延ばしにしていた問題や課題、新たな気付きがあるはずです。
また、経営的な視点での戦略を導き出す起点にもなるでしょうし、それを下支えするシステム化の方向性も見えてくるのではないでしょうか。
- 経営環境のイメージ図を作成し、皆が共通認識できるように、見える化を図りましょう
- 内部環境と外部環境を整理しましょう。
この事で、経営戦略に基づいた今後のシステム化の方向性が見えてくるはずです。
Step 1-3 事業構成を明確に
◇貴方の会社の経営目的は何ですか?
◇その経営目的を実現するために、どのような領域で事業を営んでいますか?
◇その事業は、経営管理上どの様な指標により業績管理されていますか?
経営環境を明確した次は、事業構成を明確にしましょう。
何故なら、システム化を検討する際、下記の3つの視点を関連付けて検討すべきだからです。
この3つの視点を関連付けて検討しないと、経営戦略に基づく、経営に本当に必要なシステムとはならないでしょう。
経営管理
経営戦略/計画の実現に向け事業が構成されているはずです。
システム化に当たり、達成目標指標(KGI) と 重要業績指標(KPI) を設定し、業務実績を効果測定が出来る仕組みである事が望ましいからです。
業務管理/推進
事業を推進する業務は、経営資源を効率的に運用/管理すると共に、外部環境を有効に活用出来る仕組みである事が望ましいからです。
業務は作業の集合体であり、利益極大化(売上向上とコスト削減)を目指す活動ではないでしょうか。
作業/事務
業務を推進する作業は、定型作業と非定型作業に分けられます。
コンピュータは、定型作業を処理(特に大量処理)するには最適な道具であり、定型作業は可能な限りシステム化することが、効率化への近道ではないでしょうか。
非定型作業においても、仕事のやり方を見直せば定型化できるものもあるかもしれません。
人とシステムの役割を見直し、定型化できるところは定型化し、作業効率を向上させる仕組みである事が望ましいからです。
ここで、経営目的、事業領域、事業目的を関連付けした、『事業構成図』を作成しましょう。
- 経営目的/事業領域を意識した事業構成図を作成しましょう。
実のところ、業務の事は分かっていても、経営目的や事業領域と関連づいて会社全体の事を知っている人はそんなに多くないのでは。
これを機会に、全員が分かるようにしてみてはどうですか。 - システム化は経営管理/業務管理・推進/作業・事務の3つの視点を関連付けして検討するようにしましょう。
経営に役立つシステムへの第一歩です。
Step 1-4 経営管理方法を明確に
事業構成を明確にするステップで、システム化の検討視点の1つに経営管理の視点が必要であると触れましたが、貴方の会社では経営管理方法が明確になっていますか。
- 業績管理
- 経営戦略/経営計画
- 予算制度
- 資金管理
- 原価管理
- 経営リスク管理
- 経理業務
- 販売管理
- 仕入れ管理
- 在庫管理
- 資産管理
など、諸々の視点で経営管理を行われていると思いますが、明文化されていますか?
売上計上基準、発注基準、仕入基準、商品管理基準、在庫管理基準、原価管理基準など、経営管理方法に基づき、各種の基準を設けているはずです。
これら、各種基準は、法律で決められているものを除いては、それぞれの会社でルール決めしているはずです。
という事は、システム化においては、これらの管理方法や基準を無視することは出来ないということです。
◇今の経営管理方法で、問題はありませんか?
◇達成目標指標(KGI)と重要業績指標(KPI)など、業務実績を効果測定が出来る指標類はありますか?
◇貴方は、経営管理面でシステムに何を望みますか?
望むものがハッキリしなければ、また、それを明確に伝えられなければ、システムに組み込まれるはずもありません。
- 経営管理方法を明文化しましょう。
- システム化を考えるときは、経営管理方法(各種基準/指標類)を意識しましょう。
- システムが何かをしてくれるわけではありません。システムに何をさせるかです。
Step 1-5 組織構成を明確に
貴方の会社はどの様な組織構成になっていますか。
どの会社も組織化(組織形態は様々でしょうが)され、営業や経理などの各部門は、それぞれの役割がハッキリしていることでしょう。
ところで、権限(職位と職務)とチェック機能については如何でしょうか?
既にある組織図と照らし合わせ、権限とチェック機能が明確になっていますか?
システム化とどういう関係があるのかと疑問を持たれるかも知れませんが、システム化において、この権限とチェック機能は業務統制上とても大切なことなのです。
役割面から見れば、システムが各部門の役割にあっていなければ、折角導入したシステムも即お払い箱。
勿体無い限りです。
権限とチェック機能から見れば、システムを運用する際、会計に関する職務権限を経理が持っているにも係わらず、他部門で会計に関する操作が出来てしまっても構わないのでしょうか?
経理部門でも、誰しもが同じ権限を持つべきなのでしょうか?
答えは簡単。NOです。
業務統制の欠如であり、これほど会社にとって危ないシステムはありません。
ただ、意識的に抜け穴を作っている会社もあるようですが、当然お勧めは出来ません。
市販パッケージでは、会計システム(経理系)や販売管理システム(営業系)に代表されるように、システムも各部門の役割を意識しています。また、権限やチェック機能もかなり充実しているようです。
市販パッケージはこなれたもので、これらの要素が取り込まれていますが、自社用のシステムを構築しようと考えた場合は、これらの要素を取り込んだシステムにしなければなりません。
- 役割
- 権限
- 責任
- チェック機能
は、システムに対する信頼度の評価基準ではないでしょうか。
システム操作を誰でも出来るように簡単にする、という事と視点が違うのです。
悪いことが出来てしまうシステムは、悪人を作ってしまいます。
悪人を作らないためにも、組織構成を明確にして、しっかりと統制の掛かるシステムとしましょう。
- 組織図を元に、権限とチェック機能を関連付けてみましょう。
- 役割、権限、責任、チェック機能により、システムの信頼度が総合的に評価されます。
Step 1-6 業務構成を明確に
既に事業構成と組織構成が明確になっていると思いますが、それぞれの事業はどの様な業務により構成・推進されていますか。
それでは、それぞれの事業がどの様な業務で推進されているかを明確にしましょう。
まずは、業務の棚卸しをしましょう。
その際、各業務を『営業系業務』、『経理系業務』、『管理系業務』などのように分類分けし、業務一覧として整理し、更にその業務がどの様な作業で成り立っているかを明確にするのがポイントです。
また、業務一覧には、権限とチェック機能、取扱う情報、各業務で利用しているシステム、利用している帳票や伝票類も併せて記載するようにしましょう。
次に、各業務間の関連性を明確にしましょう。
同じ分類間、違う分類間、様々な形で業務は関連しあっているはずです。
例えば、営業系業務に『販売業務』と『請求業務』があれば同じ分類間で、
また『請求業務』は違う分類の経理系業務に、という具合に。
これらを、『業務構成図』としてイメージ化を図りましょう。
その際に考慮することは、
- 目的と目標
- 事業領域
をこの業務構成と関連付けることです。
目的/目標 ⇒ 事業構成 ⇒ 業務構成
という具合にブレイクダウンしてイメージ化できれば、システム化対象範囲を決定する際に、どの事業のどの業務をシステム化するのがハッキリとするばかりでなく、各業務の関連性がハッキリとするので、効率的にシステム化を行うことができるようになります。
- 全体を見据えた上で必要な範囲をシステム化する。
- 必要な範囲に最適なシステムを導入する。
その為には、業務構成を明確することが前提となります。
- 業務を棚卸しし、業務一覧を作りましょう。
- 棚卸しした業務がどの様な作業で構成されているかを明確にしましょう。
- 各業務間の関連を明確にしましょう。
- 業務構成図を作りましょう。
その際、目的/事業構成/業務構成を階層化するイメージで。 - システム化が必要な業務範囲を選定し、最適なシステムを導入するために。
Step 1-7 業務フローを作成
何かをやる時、それを上手くやるためには
◇段取り
が必要であることは言うまでもありません。
それが、会社組織における業務であれば尚更の事ですね。
先の段階で業務/作業を明確にしていただいたと思いますが、それらの業務は、どの様な段取りで執り行われていますか?
既に作成されている組織構成図、業務一覧、業務構成図を利用して、『業務フロー』を作成してイメージ化を図りましょう。
業務フローとは、各業務/各作業を遂行するにあたり、各部門間でどの様に経営資源(人/物/金/情報)を利用または流通させているのかを、順を追ってイメージ化する流れ図です。
業務フローを作成すると、現在の業務のあり方が適正であるかが見えてきます。
- ここを改善したらもっと効率的な業務推進になるのでは。
- ここをシステム化したらもっと業務の効率化を図れるのでは。
- ここが業務上の問題点だ。
などです。
現場では、自分の業務のことは分かっていても、他人のやっていることは良く分かっていないという実態があるはずです。
この業務フローを作成すると、誰しもが会社における各業務の関連性や実態が把握できるようになるはずです。
また、実態を把握できると、理想的なシステムを検討できるようになります。
何故なら、実態と理想のギャップこそが問題であり課題であり、これらの問題や課題を解決するのが、理想的なシステムだからです。
理想的なシステム化には業務改善が伴うという事をご理解いただけましたでしょうか。
実態を把握せずにシステム化を検討するということは、自分の実力をわきまえないばかりでなく、必要な装備をも持たずに冬の雪山に上るようなものではないでしょうか。
- 業務フローを作成しましょう。
- 業務フローとは、各業務/各作業を遂行するにあたり、各部門間でどの様に経営資源(人/物/金/情報)を利用/流通しているかの流れをイメージ化した図です。
これを作ると、現在の業務推進方法が適正であるか、適切にチェック機能が働いているか、理想的なシステムとはどういうものかが見えてくるはずです。 - 現状と理想のギャップが、問題/課題。
これらを解決する理想的なシステムを想像しましょう。
Step 1-8 システム構成図を作成
貴方は家を建てるとき、または、住宅を購入するときに、まず何をしますか?
立地条件、家族構成、生活習慣、趣味など、様々な夢や想いを胸に秘め、自分の理想に近い家の外観や間取りなどを想い描いていませんか?
その時、通り掛かりに見て素敵だなと思った家や、新聞の折り込み広告や住宅雑誌などに掲載されている間取り図などを眺めているからこそ、自分の理想が想い描けるのではないでしょうか。
現物や写真やイメージ図など、目に見える物があるからこそ、現実に近い形で思い描けるのではないでしょうか。
システムの世界に置き換えて考えてみると、システムはコンピュータの中で動いている目に見えない世界であり、出来上がっても家とは違い、内覧することが出来ないのです。
また、コンピュータの外観を見ても、それはただの箱です。
ですので、システム構成をハッキリとさせておかなければ、出来上がったシステムを増強したり改善したりする時に、コンピュータの中がどの様なシステムになっているか分からない『手を付けられないブラックボックス』と化してしまう恐れがあるのです。
業務フローと同様、現在のシステムはどの様に構成されているのか、全体的な視点から
『システム構成図』を作成し、イメージ化を図りましょう。
システム構成図は、各業務がどの様にシステム化されているかを示す図面です。
既にシステム化が進んでいる会社にはシステム構成図があってしかりですが、今まで関与させていただいた会社の中には、かなりシステム化が進んでいるにも係わらず、システム構成図がないばかりか、システムの全体を掌握する人すらいないという会社もあります。
既にシステム化が終わっている会社であっても、先々にシステムの再構築という段階が必ず訪れます。
その時になって、うちのシステムはどういうシステム?
なんて事にならないように、今のうちから整備しておきましょう。
また、全社的なシステム化の方針が決っていない段階で部分的なシステムを導入してしまうと、後々、全社的な視点でシステムを再検討する際に、足枷となる可能性があります。
そのためにも、『全社的な視点で』システム全体像をイメージ化しましょう。
とかく陥りがちなのが、今必要な範囲でシステムを考えてしまうことです。
全体を見据えた上でシステム化を考えておかないと、パッチワーク的なシステム郡が増えるだけで、全体としての効率化の足枷となってしまうばかりでなく、無駄な投資をしてしまう可能性があるからです。
- システム構成図は、コンピュータの中の見えない世界を見えるようにするものです。
見えるようにしておかなければ、後々困るのは貴方の会社です。 - システム構成図を作るときは、全体の業務をイメージして作るようにしましょう。
- 全体をイメージするからこそ、全体の効率化をめざせる様になります。
Step 1-9 問題・課題および対策を明確に
ここまで現状分析を進めてくると、様々な問題や課題が見えてきたのではないでしょうか。
見えてきた問題や課題をレベル分けし、問題・課題一覧表として整理しましょう。
- 『レベル1』 経営管理面
- 『レベル2』 業務管理面/業務運用面
- 『レベル3』 システム面
一覧表に整理できたら、各問題・課題を分類分けしてみてください。
- 業績管理
- 経営戦略/計画
- 予算制度
- 資金管理
- 原価管理
- 経営リスク管理
- 業務改善
- 販売/仕入管理
- 在庫/資産管理
など、自社の特性に合わせて分類を設定し、各問題・課題に当てはめてみましょう。
更に、各問題・課題毎の対策(解決の方向性)を検討し、一覧表に追記してみましょう。
その際、挙げられている問題や課題の全てがシステムで解決できるとは限りませんので、無理にシステム的な対策を取り繕う必要はありません。
分類分けすることで、
- システムで解決することが可能な問題・課題
- 不可能な問題・課題(人の活動でのみ解決される様なもの)
が明確になってくるはずです。
更に、問題・課題の対策について、『財務』『業務プロセス』『顧客』『学習と成長』『業績管理』『システム』の6つの視点に取り纏めてみましょう。
その際に留意することは、
- システム化の方向性
- 目的
- 目指す効果
を意識する事です。
ここで取り纏めた内容が、システム化の重点検討項目となるはずです。
- システム化の方向性を明確にするために、問題・課題を整理しましょう。
- 現状を把握しなければ、理想的なシステムは考えられません。
- 理想的なシステムを考えるには、『課題』 や 『問題』 が整理されていなければなりません。
何故なら、現状と理想のギャップこそが 『課題』 であり 『問題』 であって、これらを解決することが理想的なシステムとなるからです。 - 『財務』『業務プロセス』『顧客』『学習と成長』『業績管理』『システム』の6つの視点で、システム化の重点検討項目として整理しましょう。
システム化の方向性/目的が見えてくるはずです。
当社は、顧客の立場に立ち、IT化・システム化戦略の企画・立案および推進、課題解決をご支援させていただいておりますので、お悩み事やお困り事をお持ちのユーザ企業様、お気軽にご相談ください。