A社のプロジェクトは、苦難の連続。
システム開発を担当するベンダーは努力をするものの、プロジェクトの進め方に始まって、納期・品質など、どれをとっても悩み尽きないものでした。
振り返ってみると、ベンダーのシステム開発能力に問題があるわけではないのですが、ユーザーの業務要件を正確に把握し、システム要件へと展開する事に不慣れだったのではないかと。
当然ながらA社では、業務要件を明確にし、RFP(提案依頼書)を作成した上で発注をしております。
そのRFPに基づき、ベンダーと『システム要件定義』も行っております。
しかし、業務的に意図することがを理解出来ていなかったと思わざるを得ない『認識のずれ』が工程が進むにつれて発覚してきたのです。
更に、スケジュールが厳しくなるにつれ『分かったつもり』で設計工程を端折り、製造工程へと駒を進めてしまう有様。
会議の度に相当厳しく苦言を呈し、その都度対策を図るのですが、暫くするとまた元の状態に戻ってしまい・・・
こんな状態で右往左往しながら進んできたA社のプロジェクトですが、やっと本稼働まで漕ぎつけました。
本稼働初日、状況を確認するためA社に立ち寄ってみたところ、忙しく動き回るA社の担当、その後を追うようにベンダーの担当が・・・
何やら不穏な空気が漂っているではありませんか。
ベンダーのSEが詰めているシステム開発ルームを覗いてみると、キーボードを叩く音のみが響き渡り、何とも表現し難い緊張感が漂っているではありませんか。
早速ベンダーのPMに状況を確認したところ、一部業務がストップしてしまったとのこと。
本稼働前の2週間、現場にシステムをテスト開放し、問題なく動いていたシステムがです。
対応するベンダーの担当SEの姿を見ていると、何だか、システム開発を生業としていた頃の自分の姿を見ている様な気がして、いたたまれない思いが・・・
本稼働日のトラブルであり、且つ、業務を停止させてしまったわけですから、ベンダーは緊急対処による復旧までの約2時間ほど、緊迫した対応をしておりました。
並行してベンダーは原因究明を進め、トラブル発生から約6時間後の落ち着きを取り戻しつつあるころ、トラブルの原因報告を受けたのです。
約6時間のあいだにトラブル件数も順調に増え(?)、報告を受けた時点で既に十数件に。
まあ、システム開発プロジェクトでは当たり前のこと(?)なので、そんなに驚きもしなかったのですが、ただ、情けない実態が浮き彫りにされてきたのでした。
データの移行ミス、本稼働直前に修正したプログラムの動作確認の甘さ・・・
全てがベンダーの責任とは言わないまでも、あまりにも初歩的なミスばかり。
アタフタとした日々が約2週間続きましたが、何とかやっと落ち着きを取り戻しつつあります。
ところが数日後、長年この仕事に携わっておりますが、こんな 『 不祥事 』 は初めてとも言える人為的事故を引き起こしてしまったのです。
折角落ち着き始めた矢先のことなので、唖然としてしまいました。
このシステムは自社完結のシステムではないため、当然ながら取引先へもその影響を及ぼしてしまったのです。
システムは回復しても、ユーザが取引先に対して失墜した信頼は、そう簡単には回復できないのです。
回復ばかりではなく、取り引きそのものに影響を及ぼすこともあるのです。
結果次第では、ユーザ企業の『 信用 』を失墜しかねないとの自覚をベンダーのSEは強く持つべきでしょう。
システムとは経営そのものである。
コンピュータシステムとは、そのシステムを効率化するための道具である。
故に、コンピュータシステムのトラブルは、その会社の経営に影響を及ぼす可能性がある。
と言うことでしょうか。